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Are you busy? ≠ あなたは忙しいですか。

 あなたはどれだけ用事が詰まっていると「忙しい」と言いますか。私の場合は、三度の食事も何か仕事をしながら取り、お茶を飲む間でも何かをし、お風呂に入る時間も10分以内と決めて、一日の睡眠時間が5時間以内という状態になると、ようやく「忙しい」と言います。ですから、「忙しいけど、食事でもしにいこうか」などという台詞は到底私の理解の領域を超えています。


 どの程度予定が詰まっていれば忙しいと感じるかは、日本人の間でも様々です。それが国境を越えると更に様々になりますが、日本人と欧米人の間ではおおまかに見て一つ境界線があるような気がします。


I’m busy today, but have a few minutes to talk to you. と言われて、じゃあ、話す要点を急いでまとめなければと思っていたのに、あれよあれよという間に時間が経って、30分も話し合っていた経験があります。忙しいのに時間を割かせてしまって申し訳ないと謝りましたが、相手は別に焦っている様子も見せず、後1時間半のうちに同じ建物内にある二ヶ所の事務所に印刷物を届ければ今日の用事は終りだと言います。「まあ、そんなことだけで忙しいと言うなんて、常識のずれた人だこと!」とその時は思いましたが、その人が常識外れでないことは後々わかりました。


 Are you busy? というのは、何か予定が入っているかという意味であって、予定が沢山詰まっているかという意味ではないらしいのです。そこで I’m not busy. と言うと、「じゃあ、何も予定がないだんだったら、映画を見に行こうか」とか「食事に行こうか」ということになります。I’m not busy, but I have to work till 5 o’clock. などと言ったら、相手は混乱してしまうかもしれません。「何も予定が無い、つまり時間が空いているよと言いながら、5時まで仕事があるなんて、どういうこと?」と思われそうです。


 一方、I’m busy. という言葉は、国際ビジネスにおいて日本人泣かせのようです。日本人は、ビジネスにおいて「時間的に無理があります。」という言い方はしても「忙しいので、できません。」とは滅多に言いません。「他の客の仕事で手一杯であなたの仕事ができない」というのは失礼だから言えないということなのでしょう。しかし、欧米では、“I have a lot to do.” とか “I was too busy to send you an email.” という表現は決して禁句ではないようです。社運をかけてスケジュール通りに物事を運ぼうと、残業をしたり、他のスケジュールの微調整を重ねて時間をひねり出したりする日本人の目には、そうした欧米人は大した度胸持ちに見えるかもしれません。しかし、彼らは決して怠け者ではなく、これには「busy  ≠ 忙しい」の言葉の違いを超えた歴史と文化の差がありそうです。逆に、彼らからすれば、無い時間を創り出す日本人の常識は信じられないかもしれません。


 欧米の相手先のせいでスケジュールがどんどん遅れてしまうといらいらする前に「busy  ≠ 忙しい」を頭に入れておけば、少しは気持ちが前に進むかもしれません。でも、その文化の差を見込んだ具体的なスケジュール調整は、大変だとは思いますが、個々人の腕の見せ所ですね。